はしがき・MDR-Z7の紹介②
予告してからだいぶ時間が経ってしまいましたがSONYの元フラグシップヘッドホンMDR-Z7のレビューをしたいと思います。
第1回でも紹介をしましたが簡潔にまとめましたので詳しく紹介したいと思います。
数多くのヘッドホンが登場しますので写真が大量です...
このMDR-Z7が発売されたのは2014年、第1回目でも書き綴っていますがこの頃はSONYはハイレゾを広めようと躍起になっていた時期です。
2013年にはハイレゾ対応フラグシップウォークマンZX1を開発・発売
2014年にはリスニング向けXBAシリーズ最上位モデルXBA-Z5を発売
同じく2014年にSONYの標準ヘッドホンMDR-1Aを発売
このようにSONYのハイレゾ対応を謳う製品の発売ラッシュが続きました。
そんな中SONYのフラグシップとして開発・発売されたのがMDR-Z7です。
このMDR-Z7フラグシップモデルながら6万円台の比較的低価格で販売されました。
2014年当時の他社のフラグシップモデルの価格は10万円は超えている物が大半で
例えばドイツの老舗オーディオメーカ、beyerdynamic
1937年に世界で初めてダイナミック型ヘッドホンを開発した一流のメーカーですが
2014年当時のフラグシップシリーズ”T1”は市場価格が12万円程度
同じくドイツのヘッドホンメーカーの雄ゼンハイザーの開放型フラグシップモデルHD800に至っては20万円と非常に高価です。(もはや趣向品の領域ですが…)
このように各メーカーがフラグシップの値段を大幅に釣り上げる中”当時の”SONYは価格を釣り上げることなくMDR-Z7を売り出したのです。
とは言ってもMDR-Z7の販売価格帯5~6万円には競合相手が多数存在していました。
例えばヘッドホン好きなら誰もが知る伝説の名機ゼンハイザーが誇るHD650
HD650は2004年にゼンハイザーのフラグシップ機として発売以来16年を経ても一流の音質を誇る開放型の名機です。
一度は後継機HD660Sの発売で廃盤となりましたがその圧倒的人気から不死鳥のごとく復活して再び再販された逸話を持つ機種でもあります。
クラシックをよく聴かれる方でしたら間違いなくお勧めはできる機種ですがインピーダンスが300Ωと非常に高く優れたアンプが求められる扱いに非常に難儀する機種です。
他にも同じくSONYのモニターヘッドホンMDR-Z1000があります。
MDR-Z1000は2010年に発売されたプロユース向けのヘッドホンです。
SONYにはMDR-CD900STという30年にわたって全国のスタジオで使われる生ける伝説がありますが使用用途が異なり帯域周波数を80Khzまで拡大することでMDR-CD900STでは対応できない超高音域まで出音するヘッドホンです。
ハイレゾ対応プロユース向けでは評価が高い機種でしたが残念ながら販売終了が近づいています。(SONYオンラインストア,ヨドバシで販売終了)
2020年現在でもこの5~6万円にはTAGO T3-01のような名機と評されるヘッドホンがあります。
ところでMDR-Z7は70mmという巨大なドライバーを搭載しています。
ドライバーの口径が大きいと設計が甘いと共振が起きやすくなり音像が破綻する事がありますがSONYは振動板を「アルミコート液晶ポリマー」という軽く剛性の高い素材を選ぶことで、共振を最小限にしています。
バランス駆動とは
ところでSONYはハイレゾ音源の他にバランス駆動を積極的に推し進めています。
バランス駆動とはケーブルの+,-それぞれに逆相の信号を送り倍の振幅と同相ノイズの軽減を図る駆動のことです。
そのため従来の駆動では出力がRLの2回路だけですがバランス駆動ではR+R-L+L-の4回路が必要となっています。
★ケーブルだけR+R-L+L-に分かれていてもクロストローク防止のためのグランド分離配線というだけで接続するアンプ側がバランス駆動を想定して設計されている場合で初めてバランス駆動ということができます。
メーカー側がバランス駆動に対応したDAP,AMPを開発・販売する場合アンバランス駆動よりもバランス駆動の方が音質が良くなるように設計します。
しかしながらSONYは音質の差が顕著でSONYのオーディオ製品はバランス駆動で最高音質を実現するような設計になっているのがほとんどです。
このMDR-Z7も例外ではなくバランス駆動で駆動すること前提で設計されています。
改造前の音質
再生環境はデジタルトランスポートがZX2+MDR-Z7リファレンスアンプPHA-3+SONYアップグレードバランスケーブルMUC-B12BL1+MDR-Z7です。
デジタルトランスポートとはデジタル接続時の音源を流す機器
リファレンスアンプはヘッドホンにおいて最適になるよう設計されたアンプのことです。
この組み合わせは2015年~2016年にかけてSONYストアにて極上リスニングセットとして販売されていました。
MDR-Z7の能力をフルに発揮させる組み合わせです。
SONYのウォークマンZX2ではとてもMDR-Z7の能力を発揮することはできませんので同じくSONYのヘッドホンアンプPHA-3を接続しています。
このPHA-3持ち運びが可能なポータブル設計ながら据え置き型ヘッドホンアンプの音質並みの音質を誇る優秀なヘッドホンアンプです。
★オリジナルでは完全にリスニング向けのチューニングで高価格ヘッドホンにありがちな微小な音までもれなく拾うような高解像度ではありません。
目立つ点としては中域(ボーカル域)が非常に艶のある綺麗な表現と量感のある低音です。
70mmという非常に巨大なドライバーから想像されるほど広大な音場というわけでもなくまとまった音場と脈動感のある表現しますのでポップスには最適なリスニング機でしょうか。
ただ問題があり低音の反響がかなりひどくうまく低音が定位しない点。
最近の70mmドライバーを搭載したSONYのヘッドホン(MDR-Z1R,MDR-Z7M2)では制動が効くようになり低音の反響が抑えられていますがMDR-Z7は残響がひどく安いバスレフのような印象を受けました。
改造後の音質
イヤーパッド改造後のMDR-Z7はオリジナルとはかなり印象が変わりました。
まず感じたのが低音の量が少なくなったことです。
全体的に帯域バランスがフラットに近づき見通しが良くなりました。
低域から高音域まで 音がストレートに飛んでくるような感触でスピード感やキレは改善されています。
改造MDR-Z7は古いJAZZや70-80年代の ロックを聴くには適度な甘さと明瞭に聴かせる味付けとなっており唯一無二の存在となっています。
終わりに
3回に分けて紹介したSONYの元フラグシップヘッドホンMDR-Z7
価格は5~6万円ながら非常に上質な音を奏でるヘッドホンです。
SONYのエッセンスを受け継いだリスニング機としては最後の機種でしょうか。
後継機MDR-Z7や現フラグシップMDR-Z1Rでは音の方向性を変え高解像度重視となっており従来のSONYの音作りではなくなっています。
MDR-Z7M2のイヤーパッドに換装することで弱点が補強されオールラウンダーな唯一無二の音を奏でます。
後継機MDR-Z7M2が発売され新品で市場に出回ることはもうありませんが中古で見かけた場合には是非視聴していただきたいSONYの名機だと思います。
ご覧いただきありがとうございました。
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